競争が激しくなったとき、最初に何をしますか。

広告を増やす。SNSの投稿頻度を上げる。キャンペーンを打つ。値下げをする。経営者が取りやすい行動の多くは、こうした「施策の追加・強化」の方向に向かいます。

そしてその多くが、しばらくすると「やったが、手応えがない」という状態に戻ってきます。施策を変えても変えても、根本的な状況が変わらないという経験をお持ちの方もいるかもしれません。

競争環境が変わったとき、最初にすべきことは施策の追加ではありません。「自社は誰にとって、どんな状況で、どんな存在か」という問いを立て直すことです。

💡この記事で分かること

  • 競争が激しくなったとき「施策を増やす」より先に問うべきことの中身
  • 「誰にとって・どんな状況で選ばれるか」を問う意味と、それが施策の選択を変える理由
  • 沖縄の市場規模・競争構造の中で、この問いがより重要になる背景

なぜ施策の前に問いが必要なのか

施策は「何かを届ける手段」です。届ける内容が明確でなければ、どの手段を選んでも届くべき相手に届きません。

広告を出しても反応が薄い、SNSを頑張っても問い合わせにつながらない——そういった状況の多くは、手段の問題ではなく、「誰に・何を・なぜ届けるか」が設計されていないことから起きています。手段を変えても同じ結果が続くのは、そこに問題があるからです。

競争が激しくなったとき、多くの経営者は「もっと届かせなければ」と感じ、手段の強化に向かいます。しかし届かない原因が設計の不在にある場合、手段を強化しても根本は変わりません。

【マーケティング理論の視点】

バイロン・シャープの研究が示すのは、顧客は購買の場面で想起した選択肢の中から選ぶということだ。想起されないブランドは比較の土俵にも上がれない。施策はその想起を増やすための手段であり、誰にとってどんな状況で想起されるかの設計なしに施策を重ねても、想起の積み上げにはならない。

設計なき施策は、認知の砂の上に積み上げる作業である。

最初に立てるべき三つの問い

では、施策の前に問うべきことは何か。整理すると三つの問いになります。

誰が顧客か

「すべての人」を顧客にしようとする企業は、誰からも強く想起されません。競争環境が変わったとき、まず確認すべきは「自社が最も価値を届けられるのは誰か」という問いです。

業種・規模・状況・課題——その組み合わせで、自社が最も力を発揮できる顧客像が見えてきます。ここを曖昧にしたまま施策を打つと、「誰にでも刺さるが、誰にも深く刺さらない」発信になります。

どんな状況で選ばれるか

顧客は何かが起きたとき、あるいは何かを必要としたときに選びます。「競合が増えて手詰まりを感じたとき」「新しい事業を始めるタイミングで」「ウェブからの問い合わせが止まったとき」——そういった具体的な状況を想定できているかどうかが、発信の言葉を変えます。

「うちのサービスはこんなにいい」という発信より、「こういう状況のときに役立てる」という発信の方が、当事者の心に届きます。状況を具体的に描くほど、読んだ人が「自分のことだ」と感じやすくなります。

競合ではなく自社を選ぶ理由は何か

顧客が比べる状況に入ったとき、「なぜ競合ではなく自社を選ぶのか」という問いに答えられているかどうかを確認します。

ここで大切なのは、「自社の強みを言葉にする」ことではなく、「顧客の視点から見て、自社を選ぶ理由になっているか」を問うことです。経営者が「強みだ」と思っていることが、顧客にとって選ぶ理由になっているとは限りません。この問いを顧客の視点から立て直すことが、差別化の起点になります。

沖縄の競争環境でこの問いが重要な理由

沖縄の市場は県内完結型で規模が限られています。同じ業種で複数の事業者が同じ顧客層を取り合う構造は、本土の大都市より密度が高い場合があります。

この環境では、「広く薄く認知される施策」の費用対効果が特に低くなりやすい。認知を広げても、「なぜこの会社か」という問いに答えられていなければ、それは比較の入口にもなりません。

逆に言えば、「誰にとって・どんな状況で・なぜ自社か」が明確な会社は、小さな市場の中でも強く想起されます。施策の量より、想起の設計の質が問われる環境です。

競争が激しくなったとき、施策を増やす前にこの三つの問いを持つこと。それがすべての施策の前提になる設計であり、競争環境の変化に対して最初にすべきことです。手数を増やすのではなく、問いを立て直すところから始める——そのことが、競争の土俵を変える出発点になります。


【次のステップ】

支援の進め方・設計のアプローチについて、こちらの資料で確認できます。「何から整理すればよいか」という状況の方に向けた内容になっています。


渡辺奎聖のポートレート写真

【著者プロフィール】

渡辺奎聖 Watanabe Keisei

・ 中小企業診断士(経済産業大臣登録)
・ 医業経営コンサルタント
・ 上級ウェブ解析士

「”沖縄発”のブランドを時代を切り開くシンボルに」を信条に、エビデンスに基づくマーケティングで地域経済の持続可能な成長を支援します。