「HPをリニューアルして半年。デザインはきれいになりました。スマホでもちゃんと見られるようになりました。でも問い合わせは変わっていません」
こうした状況を話してくださる経営者の方がいます。制作会社への不満を口にされることもありますが、多くの場合、制作会社の仕事の質に問題があったわけではありません。
では、なぜ変わらなかったのか。
💡この記事で分かること
- HPリニューアルが問い合わせ増加に結びつかない構造的な理由
- 「制作の前に必要な設計」とは何か
- 沖縄の補助金活用とHP制作の間で起きやすいパターン
HPは「届け方」のひとつに過ぎない
ホームページは、顧客があなたの会社にたどり着いたとき、情報を確認し、問い合わせを決断するための場所です。「届け方」を整える道具です。
ただ、問い合わせが起きるには、その前の段階がある。顧客があなたの会社を思い出し、「相談してみようか」という意欲が生まれ、HPに辿り着くという流れです。
HPのリニューアルは、この流れの「最後の段階」だけを整えます。顧客が「なぜ自社に辿り着くか」「どんな状況でどんな文脈で思い出すか」という設計は、HP制作の範囲外です。
「誰に・何を・どんな状況で届けるか」——この設計が固まっていない状態でHPをリニューアルしても、見た目は整っても、「自社に辿り着く人」が増えなければ問い合わせは変わりません。
制作会社に頼んでも「設計」は代わりにしてもらえない
HP制作会社の専門性は「制作」にあります。デザイン・コーディング・SEO対策・スマホ対応——これらを高い品質で実行することが、制作会社の仕事です。
「誰のどんな課題を解決するサービスを、どんな言葉とビジュアルで伝えるか」という設計は、制作会社が代わりに行うことは難しい。なぜならそれは、その会社の経営の文脈・顧客理解・競合との差別化についての深い知識がないとできないからです。
制作会社は設計ができれば最高の仕事をしてくれます。設計がない状態で依頼すると、「何をどう見せるか」を制作会社が独自判断で進めることになり、結果として「きれいだが問い合わせが来ないHP」が完成します。
これは制作会社が悪いのではなく、役割の分担として「設計は依頼側が用意する」という構造の問題です。
沖縄で「補助金でHP制作」が増えた背景
沖縄では近年、IT導入補助金や県の支援制度を活用したHP制作・リニューアルが増えています。補助金によって費用の一部が補助されるため、経営者が「やってみよう」と動きやすくなっています。
しかし補助金を使ったHP制作には、一つの落とし穴があります。
費用の大部分が補助されると、「投資に見合う成果を出さなければ」という切迫感が薄れやすくなります。自己負担が軽いため、「まずやってみて、効果が出なければ仕方ない」という姿勢が生まれやすい。
その結果、「何のためにリニューアルするか」「誰に何を届けるためのHPにするか」という設計の議論が省略されたまま制作が進み、出来上がったHPが「誰に届いているのかわからない」状態になることがあります。
補助金を活用したHP制作が悪いわけではありません。ただ、補助金が「設計なしに制作を始めやすくする」という副作用を持つことは、認識しておく価値があります。
【マーケティング理論の視点】
バイロン・シャープの研究では、ブランドへのアクセスを容易にする「フィジカルアベイラビリティ(物理的な利用可能性)」の整備が購買促進に有効とされています。ホームページはこのフィジカルアベイラビリティを担う重要な媒体です。
ただしその前提として、「そのブランドを頭の中に持っている顧客が存在すること」が必要です。想起されていない状態でのアクセス改善は、空の道路に標識を立てるようなものです。
制作の前に決めておくべきこと
HPリニューアルを検討するとき、制作会社に依頼する前に整理しておくべき問いがあります。
- 誰が問い合わせをするHPにするか:どんな状況にいる人が、何を解決したくて辿り着くか
- その人はどこから来るか:検索か、SNSか、紹介か。経路によって届けるべき内容が変わる
- 問い合わせに至る判断軸は何か:その人が「相談しよう」と決める根拠を自社は提供できているか
この問いに答えを持った状態で制作会社に依頼すると、制作会社は「何をどう見せるか」の実行に集中でき、結果として成果につながるHPが完成します。
設計なきリニューアルを繰り返すのではなく、一度立ち止まって「届け方の前に届ける内容を整える」ことが、次の投資を活かす鍵になります。
【次のステップ】
“顧客が求める価値”を起点にしたブランドと集客の設計について、こちらの資料で整理しています。HPリニューアルの前に読んでいただくと、設計の議論がしやすくなります。

【著者プロフィール】
渡辺奎聖 Watanabe Keisei
・ 中小企業診断士(経済産業大臣登録)
・ 医業経営コンサルタント
・ 上級ウェブ解析士
「“沖縄発”のブランドを時代を切り開くシンボルに」を信条に、エビデンスに基づくマーケティングで地域経済の持続可能な成長を支援します。
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