💡この記事で分かること

  • 口コミ・紹介に依存するクリニック経営が持つ構造的なリスク
  • 「口コミは結果であり、設計できるのは体験の方」という考え方
  • 口コミに依存した状態で何が起きやすいか
  • 沖縄の口コミ環境が、体験設計の有無をより大きく左右する理由

紹介・口コミで来てくれる患者さんのおかげで、経営が成り立っている。

この状態は、一見すると理想的に見えます。広告費をかけていなくても患者が来る。満足した患者が次の患者を連れてくる。医療機関として、これ以上の集患の形はないようにも思えます。

しかし、この状態には一つの盲点があります。「口コミが来ること」を前提に経営が設計されているとき、口コミの質や量をコントロールする手段を持っていない、という盲点です。

口コミは「結果」であり、コントロールできない

口コミは、患者がクリニックで体験したことへの反応として生まれます。「良い体験をしたから人に勧めたい」「ちょっと気になることがあった」——患者の頭の中で起きる評価が、口コミとして表に出てくる。

つまり口コミは「結果」です。院長が直接コントロールできるものではありません。

「口コミを増やしたい」と思ったとき、患者に「口コミを書いてください」とお願いすることはできます。しかしそれは口コミを増やす手段としては持続可能ではありませんし、内容の質はコントロールできません。

院長がコントロールできるのは、口コミを生む「体験」の方です。患者が受付で受けた対応、待合室での時間の過ごし方、診察前の案内のされ方、院長の説明のわかりやすさ、会計後に感じた気持ち——こうした体験の積み重ねが、「人に話したくなる」という気持ちを生む素になります。

口コミに依存する経営の盲点は、「体験を設計していないまま、体験の結果である口コミに期待している」という状態にあります。良い口コミが来ているうちはそれが見えにくい。見えてくるのは、口コミが止まったときや、良くない評価がついたときです。

口コミ依存に潜む3つのリスク

口コミに頼る経営が持続する間は問題が表面化しにくいのですが、構造的なリスクが三つあります。

一つ目は、新患の流入が紹介者の行動に左右されるという不安定さです。紹介してくれていた患者が転居した、知人への紹介が途切れた、紹介もとの医師との関係が変化した——こうした外部の変化に、経営の流入が依存している状態が続きます。

二つ目は、良くない体験の口コミへの対応手段を持ちにくいことです。Googleのレビューに低い評価がついたとき、「そんなつもりではなかった」と感じても、何が問題だったかを特定するのが難しい。体験設計が明確でなければ、どこを改善すれば良いかの起点が見えません。

三つ目は、競合が増えたときの比較軸を持てないことです。近隣に同じ診療科のクリニックが開業したとき、「うちを選ぶ理由」を言語化できていないと、患者が新しいクリニックを試すことへの対抗手段が持ちにくい。口コミだけに頼ってきた場合、この言語化が整っていないことが多い。

沖縄では、口コミ依存のリスクが増幅される

沖縄の患者コミュニティには、地域のつながりが密で、口コミが広がるスピードが速いという特性があります。

この特性は二方向に働きます。良い体験が生まれれば、その口コミが速く広がる。良くない体験が起きれば、その評判もまた速く広がる。

口コミ依存の経営において、体験設計が整っているクリニックにとって、沖縄の口コミ構造は大きな資産になります。一方で、体験設計が曖昧なまま口コミに頼っているクリニックにとっては、良くない評判の拡散リスクが本土より高い環境でもあります。

「口コミが来ているから大丈夫」という安心感は、体験設計が整っている場合にのみ、持続可能な根拠を持ちます。口コミを経営の起点として機能させるためには、「体験を設計する」という視点を経営の中に置くことが必要です。

自院の体験設計について、「誰が・どこで・どう設計しているか」を一度確認してみることが、口コミ依存から体験設計への転換の起点になります。口コミに頼らない患者体験設計について、一度整理してみたい方はご相談ください。


【次のステップ】

患者に選ばれる仕組みの考え方を、こちらの資料でさらに詳しく整理しています。体験設計という視点の最初の手がかりとしてご活用ください。


渡辺奎聖のポートレート写真

【著者プロフィール】

渡辺奎聖 Watanabe Keisei

・ 中小企業診断士(経済産業大臣登録)
・ 医業経営コンサルタント
・ 上級ウェブ解析士

「”沖縄発”のブランドを時代を切り開くシンボルに」を信条に、エビデンスに基づくマーケティングで地域経済の持続可能な成長を支援します。